左回りの時計

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頼む、ほんの二秒でいいんだ、秒針を左へ戻してくれ!
本日も快晴なり
ほんの些細な事が、すべてを台無しにする。ここは、懺悔をこめて、失われた愛の時間を検証する、そんなエリア。
朝から、雲ひとつない空だった。 駅前の小さな花屋で、白い花を買った。
昔、彼女が好きだと言っていた花だった。
あの頃の僕は、彼女が好きなものを覚えていることが、愛情だと思っていた。 だから、彼女が何か話していても、僕は黙って聞いているつもりだった。 「ねえ、聞いてる?」 そう言われると、 「もちろん」 と答えた。 でも、本当は聞いていなかった。 仕事のこと。 明日のこと。 自分のことで、頭がいっぱいだった。
ある日、彼女が小さな声で言った。 「あなたといるのに、ひとりでいるみたい」 僕は笑ってしまった。 「そんな大げさなこと言うなよ」 それが、最後だった。
今ならわかる。 彼女は別れを告げたのではない。 もう一度だけ、こちらを向いてほしかったのだ。
僕は、その小さな声を聞き逃した。
花屋を出る。 白い花を抱えて歩く僕の上を、青い空がどこまでも続いている。 こんなに晴れているのに、胸の中だけが雨だった。
もし、あの日の僕が、ほんの少しだけ素直だったら。 「どうしたの?」 そう聞いていたら。 彼女は、きっと何かを話してくれた。
僕は白い花を見つめる。 そして、誰もいない道で小さく呟いた。 「ごめん」
返事はない。 ただ、風が吹いて、花びらが揺れた。
本日も快晴なり。 それが、なぜだか僕には、いちばんつらい。

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