恋人達の浜辺

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海・浜辺、恋のキーワード。ここは、浜辺にコダワラズ、あなたのデートスポットをご紹介。写真やエッセイを添えて、ベストビューマップを作って行けたらいいなと思っています。
江ノ島の夕暮れ
海岸に着いたとき、太陽はもう、江ノ島の向こうへ沈みかけていた。
昼間の賑やかさが少しずつ遠のき、浜辺には、寄り添う恋人たちの影が長く伸びていた。
彼女は砂の上に座り、靴を脱いだ。
「冷たいね」
そう言って笑った。
波が足元まで来て、また静かに戻っていく。
僕は何も言わず、彼女の隣に座った。
江ノ島の灯台に明かりがともるころ、空はオレンジから紫へ変わっていった。
あの頃の僕たちは、未来のことなど何も知らなかった。
ただ、今日という一日がずっと続けばいいと思っていた。
帰りの電車の時間も、明日の仕事も、まだ遠い未来の話だった。
「また来ようね」
彼女が言った。
僕は「うん」と答えた。
それだけだった。
けれど、何十年たった今でも、あの「うん」は胸のどこかに残っている。
恋人たちの浜辺。
波の音。
江ノ島の夕暮れ。
そして、隣にいた人の横顔。
夕日は沈んでも、あの日の光だけは、なぜか消えなかった。
その夜、古いコートのポケットから、一枚の貝殻が出てきた。
いつ拾ったのか、覚えていない。
けれど、裏側には小さな文字が刻まれていた。
「灯台の明かりが三度消えたら、時計の下へ」
僕は息をのんだ。
それは、彼女と別れる前、誰にも見せずに書いた言葉だった。
時を越えて、あなたの心をめぐる手がかり。
そう思った瞬間、遠くで灯台の明かりが一度、二度、三度と瞬いた。
僕は立ち上がり、波打ち際を歩き出した。
あの日の約束は、終わっていなかった。


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